アニメの中で流れている音楽のことを知れば「プリンセスチュチュ」がもっと面白くなること間違いなし!(「チュチュ」の内容に関してはネタバレありです)
前置き無しに加筆・修正する場合があります。
3つのジムノペディ
マズルカ第一番
弦楽四重奏曲第二番ニ長調
ワルツ第十番
ノクターン第二番
死の舞踏
「天国と地獄」序曲
真夏の夜の夢
動物の謝肉祭
3つのジムノペディ/サティ作曲
「ジムノペディ」とは?
「ギムノペディウム」というギリシャの祭りに由来するタイトルだそうです。なんでも裸体の少年達が踊ったりスポーツ風の遊戯を行ったりする儀式だとか。
音楽
サティの初期のピアノ曲。シンプルでゆったりしていてなんだかとても神秘的な曲です。モーツァルトから百年そこらでこんなに変わるなんて、変化の速さにびっくりです。3曲にはそれぞれ主題があり、
・第一番「ゆっくりと悩める如く」
・第二番「ゆっくりと悲しげに」
・第三番「ゆっくりと厳かに」
となっています。とはいえ3曲とも似たような構成でギリシャ施法に基づく旋律が用いられています。特に二番と三番は曲の速さが微妙に違うにもかかわらず、正直言って私にはあまり区別がつかないです・・・。最も有名なのが第一番で、CMなどにもよく使われています。
るうちゃんのテーマ。なぜか後半雛の章になってからはほとんど流れなくなりますが、前半卵の章ではクレール初登場時以降3曲とも用いられていました。るうちゃんが「るう」と「クレール」の間で悩む時期に使ったということでしょうか。第一番はクレールの場面でよく流れ、第二番と第三番はるうちゃんが独りで悩んだりする場面で流れます。
マズルカ第一番(Op.6-1 嬰ヘ短調)
/ショパン作曲
「マズルカ」とは?
ショパンの祖国ポーランドの一地方「マゾフシェの(女性)」を意味するポーランド語だそうです。ショパンはポーランドに伝わる多数の民族舞踊から旋律とリズムを取りだし、形にしてマズルカと名付けました。といっても旋律をそのまま引用していることは少ないそうです。感じとしてはワルツよりゆっくりめな三拍子といったところです(テンポの遅いワルツもあるけど)。
音楽
ピアノ曲。“AABABACA”のロンド形式(繰り返される主題の間に副主題が挟まる形式)です。主題Aは比較的ゆったり情緒的で、副主題Bは激しく、副主題Cは一音一音装飾音符の付いた高音が軽やかです。短調なので少し悲しめの曲ですが、憂鬱な感じはしません。
ふぁきあがひとり悩む時に流れる曲。具体的には10.AKTでふぁきあが涙を見せる場面、18.AKTで猫先生がふぁきあに意味深な助言をする場面、19.AKTでふぁきあが回想する場面で流れます。また、11.AKTのあひるがふぁきあのことを考える場面でも使われています。ふぁきあの繊細な一面を演出する時に添えられることが多い様子(公式ガイドブックより)。なんか納得。この曲を聴くとふぁきあの肩を持ちたくなってしまいます。普段使われるのは主題Aの部分ですが、10.AKTでは流れる時間が長くCABAと流れます。すっごくいい曲で、ふぁきあオイシイなあ。
聴くヒント
ピアノ曲は弾く人によってテンポも雰囲気もかなり変わってくるので、色々聴いて好みに合ったのを探してみて下さい。日本人ピアニストだからといって好みに合う、というわけでもなさそうです。
弦楽四重奏曲第二番ニ長調
/ボロディン作曲
音楽
全部で四楽章あり、その中でも特に第三楽章が有名です。
第三楽章「夜想曲」(アンダンテ イ長調)
本来はヴァイオリン2本とヴィオラ、チェロによる弦楽四重奏ですが、チェレプニンによるオーケストラ編も有名です。個人的にはオケ編の方が厚みがあって好きです。なのでオケ編の方について書きます。まずオーボエが静かにロシア的叙情(らしい)のあふれる主題を演奏し、他の楽器がそれを受け継いでいきます。弦楽器中心の軽快なメロディーが流れた後再び主題が流れ、一瞬金管楽器や打楽器の力強い演奏が入ります。後は弦楽器が中心になって主題を演奏し、中低音金管楽器が一拍遅れでそれを追いかけていきます。ところどころ聞こえてくるハープがとてもきれいです。
「チュチュ」ではオケ編の方が使われています。卵の章では11.AKTのあひるが傘を持ってみゅうとを探す場面で流れます。その後の「ラ・シルフィード」もそうですが、みゅうとが大変なことになっちゃう直前にゆったり温かい曲が流れていると、嵐の前の静けさみたいでなんとも言えないです。雛の章では23.AKTで物語が逆戻りし、るうちゃんがみゅうととの出会いを思い出す場面、24.AKTでカラス人間になってしまったみゅうととるうちゃんがパ・ド・ドゥを踊る場面で流れます。23.AKTのなぜか8.AKTでふぁきあが蘇らせるまで変な仮面と一緒にどこかの塔の上にしまってあった剣でみゅうとがカラスを倒す場面では、金管や打楽器の力強い演奏が流れ、みゅうとのかっこよさがUpしています。
<注>公式ガイドブックに書いてある、「12.AKTで〜」という部分は間違っています。
ワルツ第十番(Op.69-2 ロ短調)
/ショパン作曲
音楽
踊りの伴奏として楽しむのではなく、聴いて楽しむためのワルツです。ワルツというよりマズルカ的な要素も持っています。大まかな流れはABABACAとなっていて、Aは感傷的な下降メロディ、Bはやや明るめに(ボキャブラリーが貧困・・・)、中間部のCではロ長調に変わります。自筆譜版とフォンタナ版(ベルリン版、パリ版)があり、一般的なのはより難しく華やかなフォンタナ版の方です。
9.AKTのるうちゃんとみゅうとがパ・ド・ドゥを踊る場面で流れます。悲しげなメロディに合わせてあひるとるうちゃんがそれぞれ思い悩みます。ここで使われているのはABAB(何カ所か切り貼りされている模様)で、フォンタナ版に似ていますが、明らかにどちらとも違うところが一カ所あります。どの楽譜が使われているのかご存じの方、ぜひ教えて下さい!
ノクターン第二番(Op.9-2 変ホ長調)
/ショパン作曲
音楽
ショパンはノクターン(夜想曲)を確立したジョン・フィールドの影響を受けて、ノクターンを書いたと言われています。ショパンの二十一曲あるノクターンの中で、この曲が最も有名です。全体の形式はAABABACCとなっていて、静かで規則正しい三拍子の伴奏にロマンチックなメロディーが乗せられています。一番左側のペダルを使う珍しい曲です。
15.AKT後半の夜から翌朝にかけての場面で流れています。ノクターンや別れの曲のようなとても有名なピアノ曲がBGMになっているのは「チュチュ」の中でも珍しいことではないでしょうか。ちょうど「やっぱあたしはふぁきあ様ラブでいくわ〜。」とぴけが言っている時にふぁきあが学園を去っていくのが涙を誘う・・・。
交響詩「死の舞踏」/サン=サーンス作曲
お話
アンリ・カルザスの詩。真夜中に死神がバイオリンを奏で始めると、墓場から抜け出した骸骨達が骨を鳴らして踊り出す。雄鳥の鳴き声が夜明けを告げると骸骨達は逃げるように戻っていく。というような内容。
音楽
「交響詩」とは、管弦楽によって詩的、絵画的な内容を表す音楽で、標題音楽の一種です。元々はピアノ伴奏付き歌曲として作曲され、その後声楽無しの管弦楽曲に改作されました。
始めに真夜中の十二時を知らせるハープが12回鳴ります。死神のバイオリンは、わざと調律をずらして狂った感じを出し、骸骨が骨をかちゃかちゃ鳴らす音は木琴で表しています。「怒りの日」(グレゴリオ聖歌)をモチーフにした三拍子のメロディーを盛り上げていき、最高潮になったところでオーボエによる雄鳥の鳴き声が入ります。
24.AKTのタイトル曲で、後半のカラスになったみゅうとが飛び出すところから、るうちゃんがみゅうとに愛を告げるところまでに流れます。五つの門が壊れて大ガラスが復活するところで最高潮になり、愛を告げところで一気に静まり返ります。涙涙で音楽なんて聴いてる場合じゃないかもしれないですが、クライマックスは特にカッコイイのでたまに聴いてみて下さい。
全く関係ないですが、PS用ゲーム「ゼノギアス」にも「死の舞踏」という曲があります。戦闘中に流れます。
喜歌劇「天国と地獄」
/オッフェンバック作曲
お話
日本では「天国と地獄」という名前で知られていますが、原題は「地獄のオルフェ」といいます。ギリシャ神話の中の悲劇をパロディ化したものです。
*ギリシャ神話*
竪琴の名手オルフェウスは、結婚してすぐに最愛の妻エウリディケを亡くしてしまう。彼女を取り戻したいオルフェウスは冥界の王ハーデス(プルート)に懇願しに行く。彼に同情したハーデスはエウリディケを返す事にするが、地上に出るまで彼女の顔を見てはいけないと忠告する。もう少しで地上だという時、不安になったオルフェウスは後ろを振り返って彼女の顔を見てしまい、彼女は再び冥界の底へと沈んでいってしまう。
このお話を元にして、「精霊の踊り」で有名なグルックの歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」も作られました。また、ブラジルが舞台の映画「黒いオルフェ」もこのお話がモデルになっています。
音楽
序曲
「天国と地獄」の序曲には、オッフェンバック自身が作曲した長いものと、カール・ビンダーという作曲家が劇の曲を短くまとめて編曲したものがあり、現在よく知られているのは後者の方です。
まず「ローエングリン」のように華やかな総奏で始まります。その後クラリネットのソロがあり、オーボエのソロ(羊飼いアリステに化けたプルートの歌の主題)、チェロのソロ(ユーリディスのアリアから)が続きます。突然打楽器や低音楽器がうなりだし地獄の場の合唱となります。やがて優しい音色のヴァイオリンソロ(オルフェのヴァイオリン)からそのままワルツになって盛り上がり、一旦静まります。その後運動会やカンカン踊りでおなじみのギャロップが始まります。これは劇のフィナーレで天国と地獄の神々が総出でパーティをする場面で流れる曲で、華やかに終わります。
「チュチュ」では、16.AKTのバレエコンクールの場面で流れています。一般生徒(人型)の時はワルツから盛り上がっていく辺りの曲(ふれいあは「ラ・シルフィード」)が使われていますが、ナマケモノ代の時だけギャロップが使われています。猫先生のあせりっぷりがマッチしています。「一歩間違えば地獄」になっていたのは猫先生の方なのかも。
劇音楽「真夏の夜の夢」
/メンデルスゾーン作曲
お話
シェイクスピアの戯曲。
父親に政略結婚させられそうになったハーミアは、愛するライサンダーと共に駆け落ちを決意し、森へ入る。それを知ったハーミアの結婚相手ディミトリアスや、彼を想うヘレナも追って森へ入っていく。森の妖精王オベロンの命令を受けた妖精パックは惚れ薬を使ってディミトリアスとヘレナをくっつけようとするが、間違えてライサンダーがヘレナに惚れるようにしてしまい、やがて薬によってヘレナに惚れたディミトリアスと争いだす。皆が疲れて寝ている間にパックが正しい組み合わせに戻し、めでたしめでたし。(ディミトリアスの気持ちは・・・?)
ちなみにボトムさんはパックに魔法でロバ男に変えられた人です。
音楽
「チュチュ」で使われた曲だけ紹介します。19.AKTのタイトル曲です。
序曲
序曲は他の曲より早く、メンデルスゾーンが17歳の時に作曲されました(他は34歳の時)。羽音を表すような弦楽器の刻みから始まります。続いて木管楽器の静かなメロディーが流れ、突然盛り上がって主題に入ります。再び羽音の弦楽器、主題と繰り返し、最後に羽音の弦楽器と木管で静かに終わります。
「チュチュ」では、19.AKTの後半、みゅうとがハーミアの心臓を取ろうとするところから、ハーミアがライサンダーに告白する辺りまで流れました。みゅとがハーミアを狙う場面で、羽音の弦楽器と鳥の羽ばたきが合っていて見ごたえアリです。また、あひるがチュチュに変身した瞬間、音楽もちょうど盛り上がるようになっています。
スケルツォ
一幕の後で演奏される軽快な曲です。忙しく動き回る弦楽器の上で木管楽器がかわいいメロディーを奏でます。途中で現れる、一斉に半音で上がっていくメロディーがアクセントになっています。
19.AKTの、あひるがボトムさんに出会う場面からハーミアのコール・ド、ひとりしゃがみ込むみゅうとの場面まで流れています。
夜想曲
4人(ハーミア、ライサンダー、ディミトリアス、ヘレナ)が眠ってしまう場面で流れる曲です。ホルンの静かなメロディーと弦の優しいメロディーが繰り返されます。
19.AKTでみゅうととクレールが踊る場面で流れます。
結婚行進曲
4人の結婚式の場面で流れる曲です。結婚式のクラシック曲といえば、この曲とローエングリン第三幕「婚礼の合唱」です。トランペットのファンファーレに続き、有名な主題が流れます。弦楽器の軽快なメロディーを挟んで再び主題が流れ、滑らかなメロディーへと続きます。最後に主題で華やかに締めくくります。
「チュチュ」において猫先生のテーマとして使われていることは言うまでもありません。よってしょっちゅう流れています。7.AKTでは、猫先生の鼻歌としてアイキャッチにまで登場しています。9.AKTのヤギ子先生のテーマ、「フィガロの結婚」序曲との組み合わせも面白いです。DVDのオマケもファン必見。
組曲「動物の謝肉祭」
/サン=サーンス作曲
音楽
ある町の謝肉祭で開かれる小さな音楽会のためにサン=サーンスが作曲した曲で、サン=サーンス自身が指揮をしました。他の音楽からの引用があったりと、ユーモアたっぷりに作られています。13曲目の「白鳥」以外は生前の出版を禁止したため、一般公演は彼が亡くなった翌年に初めて行われました。ピアノ2台に弦楽器、木管楽器、木琴などだけの小編成のための音楽です。
序奏と堂々たるライオンの行進
明るく響く高音のピアノと重く響く低音のピアノに挟まれて、弦のライオンが行進します。
5.AKTの、火祭りのことを知りたいあひるがつい大声を出し、猫先生に説明してもらう場面で流れました。確かにライオンもネコ科には違いないけど・・・。
雌鳥と雄鶏
ピアノとクラリネットで鶏の鳴き声を表しています。クラリネットは元々運指で音を変え、口では音を変えない楽器なんですが、ここでは口だけで音を変えることが要求されているようです。これができないとガーシュウィンの「ラプソディインブルー」は吹けません。
12.AKT、あひるがふぁきあの目の前でアヒルになったり、正体を隠していた事をふぁきあが怒る(?)場面で流れます。また、14.AKTではあひるの正体がばれないように(?)、ふぁきあがワニだのウシだのを持ち出してくる場面で流れています。
ラバ(野生のロバ)
ピアノがめまぐるしく動き、あっという間に終わります。
20.AKTでみゅうととレーツェルの会話を聞いた猫先生が、「結婚」という言葉に反応して飛び回る場面で流れました。
亀
「天国と地獄」のギャロップがかなりのスローテンポで演奏されます。
象
ベルリオーズの「ファウストの劫罰」より「妖精の踊り」がコントラバスでゆっくり演奏されます。途中現れる半音階での上昇は、「真夏の夜の夢」のスケルツォから取られています。
カンガルー
装飾音符で飛び跳ねる音が、カンガルーを表してます。
10.AKTであひるがみゅうとやふぁきあの部屋に忍び込む場面、12.AKTであひるの髪の毛に猫先生が反応する場面で流れました。
水族館
高音のピアノが揺らめく水を表しています。グラスハーモニカ(要はコップ)を使って演奏されていたこともあります。綺麗ですがどこか不安げな音楽です。
「チュチュ」でも、幻想的な場面や不安を感じる場面でよく使われました。3.AKTのチュチュが光の粒になってしまうという話の場面や5.AKTのみゅうととるうが踊る場面、17.AKTの「あひるはみゅうととラブラブずら?」の場面など、不安を残すお話の最後に流れることもありました。
耳の長い紳士(家畜のロバ)
「ラバ」とは違い、ゆっくりした曲です。高い弦楽器の音がロバの鳴き声を表しています。
森の奥のカッコウ
手前で静かに演奏するピアノの奥から、クラリネットののカッコウが聞こえてきます。
大きな鳥かご
フルートのトレモロが飛び交う小鳥を表しています。
ピアニスト
ハノンやツェルニーなどの練習曲をつまらなそうに弾く素人まで動物扱いです。下手な風に弾くよう、指示されています。
化石
フランス(サン=サーンスの国)民謡(「きらきら星」「うまいタバコがあるよ」「セリアに向かって出発しよう」など)やサン=サーンス自身の「死の舞踏」が登場します。まず「死の舞踏」の骸骨を表す木琴が主題を演奏します。続いて「きらきら星(ママ、聴いてちょうだい)」などの民謡が流れ、再び主題に戻ります。次にクラリネットソロが民謡を奏で、ソロの締めくくりにはロッシーニ作曲「セビリヤの理髪師」の「ロジーナのアリア」から急降下するメロディーが引用されています。最後にもう一度主題が流れて終わりです。ロッシーニ自身ユーモアや皮肉にあふれた曲を作るのが好きで、サン=サーンスはその影響を受けたようです。使い古された民謡や自分の曲を「化石」と皮肉っています。
白鳥
チェロの優雅なメロディーが有名な曲です。「瀕死の白鳥」というバレエで演奏されることもあります。
25.AKTのタイトル曲。湖のそこでるうちゃんが踊っている場面で流れます。26.AKTでも同様の場面で。他にも、13.AKTの光の粒になること覚悟でチュチュがみゅうとに告白しようとする場面で使われました。
終曲
「天国と地獄」のギャロップよろしく、これまでに出てきた動物たちが一堂に会し大騒ぎします。
21.AKTでふぁきあが樫の木になってしまう瞬間、冒頭部が流れました。