アニメの中で流れている音楽のことを知れば「プリンセスチュチュ」がもっと面白くなること間違いなし!(「チュチュ」の内容に関してはネタバレありです)
前置き無しに加筆・修正する場合があります。
別れの曲
「フィガロの結婚」序曲
展覧会の絵
コッペリア
眠りの森の美女
「エグモント」序曲
別れの曲(練習曲第三番ホ長調 Op.10−3)
/ショパン作曲
曲名の由来
ショパンの有名なピアノ曲です。「別れの曲」というのは俗称で、元々の曲名は「練習曲第三番ホ長調作品10の3」といいます。第二次大戦前、ショパンの生涯を描いたフランス映画「別れの曲」の主題歌として、この曲に歌詞をつけたものが用いられました。この曲が「別れの曲」と呼ばれるようになったのはそれからです。ショパン自身、自分でもこんなに美しい旋律はかつて書いたことがないと言っています。
音楽
ピアノっ子憧れの曲です。静かな冒頭部はメロディーと低音のシンコペーション、16音符の内声の3つのパートに別れています(手は2本しかないのに)。やがて不安げなメロディーに変わり、両手とも16音符で激しく動き出します。最後にまた冒頭部のメロディーに戻り、静かに終わります。
「チュチュ」では20.AKTの最後に流れます。カロンにちゃんとさよならを言いたかったというレーツェルのためにこの曲が使われている気もしますが、ふぁきあファン視点で見れば、これは作家に転向するふぁきあと剣との「別れ」というふうにもとれます。(←これが言いたかっただけ)
歌劇「フィガロの結婚」/モーツァルト作曲
お話
フランスの劇作家ボーマルシェの戯曲。スペインのとあるお城が舞台で、利口なフィガロとその恋人で城の小間使いのスザンナらが身勝手な城主アルマヴィーヴァ伯爵をとっちめる話。
城主の権威を失墜させるシーンが多かったため、当時何かと批判されました。
ロッシーニが作曲した歌劇「セビリヤの理髪師」はこのお話の前作にあたり、理髪師フィガロが機転を利かしてアルマヴィーヴァ伯爵の恋愛を成就させる話です。
音楽
序曲
テンポはプレストでとても速く、爽快な音楽です。弦楽器も管楽器もめまぐるしく動き回ります。
「チュチュ」では山羊子先生のテーマとして使われました。9.AKT、山羊子先生がものすごいスピードで廊下を転がる場面やもたもたする場面で流れています。いずれも猫先生と結婚したい一心で。
組曲「展覧会の絵」/ムソルグスキー作曲
エピソード
ムソルグスキーの友人に、建築家であり画家でもあるハルトマンという人がいました。ハルトマンが若くして急死してしまったため、彼を追悼する遺作展が開かれました。この曲はその時インスピレーションを受けて作られたもので、遺作展の提唱者スタソフに贈られました。ムソルグスキーの死後、リムスキー=コルサコフによって公表されました。本来ピアノの曲ですが、多くの音楽家たちがオーケストラ版に編曲し、なかでもラヴェルが編曲したものが有名です。
各曲の間に入っている「プロムナード」は、絵と絵の間にある通路を表しているようです。
音楽
プロムナード〔1〕
「展覧会の絵」の中では最も有名な曲です。5/4拍子+6/4拍子という珍しい拍子で、トランペットによってロシア民族音楽的なプロムナードの主題が演奏され、だんだん楽器が増えていきます。
第1曲 こびと
こびとと言っても可愛らしいこびとではなく、醜い姿で地底を歩く子鬼のことです。
「チュチュ」でも、雲行きの怪しい場面で使われました。9.AKTではみゅうととるうが破局の危機を迎える場面、雛の章からは14.AKTや15.AKT、17.AKTなど主に大鴉の場面で流れています。また、25.AKT、あひるがペンダントを取ろうと苦心している場面でも流れました。大鴉なのに「小人」だなんて、もしかして封印されて動けない鴉パパへの皮肉?
プロムナード〔2〕
ホルンと木管の対話風に、プロムナードの主題が優しく演奏されます。
9.AKTの冒頭、あひるが前回のことを思い出しながら悩む場面、後半チュチュに変身する場面で流れました。19.AKTの冒頭、ふぁきあのベットであひるが目を覚ます場面でも使われています。
第2曲 古城
同じタイトルの作品は遺作展に出品されていません。未発表作品のスケッチを見たか、ハルトマンから聞いた印象で作曲されたのだろうと推測されます。また、この曲だけタイトルがイタリア語表記(他はフランス語)だということからも色んな憶測が生まれています。ファゴットの淡々とした演奏で始まり、オーケストラでは珍しいアルトサックスの感傷的なメロディーに移ります。
9.AKTのタイトル曲です。美術科のまれんちゃんに「展覧会の絵」・・・「絵」つながりってのは穿ちすぎ? その他、ちょっとだけ怪しげな(変な意味ではなくて)場面でも使われています。11.AKTでふぁきあが「あひる=チュチュ」を確認するためあひるを練習室に連れ込む場面、15.AKTで心配してくれてるぴけを逆に黒みゅうとがナンパする場面、19.AKT冒頭のふぁきあがあひるを送っていく場面、22.AKTのるうが屋根の上に座っている場面などです。
プロムナード〔3〕
トランペットとトロンボーン中心に、プロムナードの主題が演奏されます。とても短い曲。
第3曲 テュイルリーの庭
パリのルーブル宮殿に隣接するテュイルリー公園で、遊びつかれた子供たちが口論する様子。木管の軽やかなメロディーに始まって、弦の優しいメロディーが入り、再び最初の主題が繰り返されて終わります。
9.AKTの冒頭、プロムナード〔2〕の後にあひるが小鳥にたかられる場面で中間部以降が流れます。
第4曲 ブィドロ
「ブィドロ」とは牛が牽くポーランドの荷車のことですが、同じタイトルの作品は遺作展に出品されていません。ムソルグスキー自身、「荷車は描写しない」とスタソフに書き送ったそうですが、スタソフの側で牛車と誤解されてしまったと言われています。また、「ブィドロ」の俗訳の「愚鈍な者」を意味しているのだと言う人もいるそうです。ティンパニなどのどっしりとした二拍子の伴奏の上で、重たい主題がチューバによって演奏されます。弦や木管が主題に加わって盛り上がり、再び音を弱めていって静かに終わります。
9.AKT、ピザ屋で猫先生が山羊子先生を説得しているところに、るうやふぁきあが通りかかる場面で流れました。
プロムナード〔4〕
木管の澄んだ音色でプロムナードの主題が演奏されます。
第5曲 殻をつけたひなどりの踊り
バレエ「トリルビ」のための衣装デザインを見て作曲されました。高音の弦楽器と木管楽器が装飾音符やトリル満載の演奏をします。「チュチュ」では、2.AKTのアヒルがるうをアリクイ美ちゃんやみゅうとに近づけまいとする場面や、16.AKTのうずらが登場する場面など、小さいキャラがかわいい動きをする時に使われました。
第6曲 サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ
裕福で傲慢な男ゴールデンベルクと貧しく卑屈なシュミュイレの会話。まずゴールデンベルクが尊大ぶって話すのを木管と弦のユニゾンで表し、次にシュミュイレが黄色い声でぺちゃくちゃとしゃべるのをミュート(弱音器)をつけたトランペットが表します。最後はゴールデンベルクの威圧的な声がシュミュイレを圧倒して終わります。
2.AKT、アリクイ美ちゃんが登場してあひるが驚くばめんや、アリクイ美ちゃんがパ・ド・ドゥのパートナーにみゅうとを指名する場面などで、アリクイ美ちゃんの恐さを引き立たせる形でゴールデンベルクの主題が使われています。
(プロムナード)
ラヴェルの編曲では省かれています。
第7曲 リモージュの市場
これに相当する作品は遺作展には出品されていません。リモージュはフランス中部の町です。色々な楽器が入れ替わりながら目まぐるしいメロディを奏でます。
第8曲 カタコンブ
「カタコンブ」とは、古代ローマ時代のキリスト教徒の地下墓地のことです。金管楽器中心の不気味な和音が繰り返されます。
「チュチュ」でも5.AKTのタイトル曲となっていて、地下墓地でのシーンに使われました。チュチュがランプの精と踊るところで流れています。
死せる言葉による死者への話しかけ
木管楽器と低音楽器が交代しながらプロムナードの主題の変奏を進めます。その間、バイオリンやビオラが高音のトレモロを奏でています。
5.AKTで「カタコンブ」に続いてチュチュが語りでランプの精を救う場面で流れています。始め暗かったメロディーがだんだん明るくなっていくのと合ってます。
第9曲 鳥の脚の上の小屋
元になった作品は時計のデザインで、グロテスクな鳥の脚が二本台をふまえていて、その脚の上に妖婆バーバ・ヤーガの小屋が立っているというものだそうです。スラヴの伝説に出てくる妖婆バーバ・ヤーガは、ほうきを持ってすり鉢に乗り、拍車を駆ってやって来るといわれ、また死を連想させるとともにさらなる発展と生命の存続を司るともいわれています。木管と打楽器の鋭い演奏から始まって、他の楽器も加えながら盛り上がっていきトランペットを頂点とする和音の連打の主題に入ります。静かな中間部が終わると再び最初の部分が再現され、盛り上がってそのまま次の曲に移ります。
22.AKTのあおとあがるうに出会う場面で静かな部分が、ふぁきあが図書の者に追い詰められあおとあが金冠町の秘密を語りだす場面で終わりの部分(冒頭の繰り返し部分)が流れ、そのまま盛り上がって「キエフの大門」に移ります。また、26.AKTの鴉になった人たちが「心臓をちょうだい、心臓をちょうだい」という場面でも冒頭部が使われました。
第10曲 キエフの大門
キエフに建造されることになった市の大門の設計図から。管楽器に減楽器も加わって華やかなコラールが演奏されます。プロムナードの主題が繰り返され、最後にはチャイムも加えながら最高に盛り上がって終わります。
22.AKTのタイトル曲です。あひるが門に心の欠片があると気づいた瞬間「鳥の脚の上の小屋」からそのままこの曲に移ります。ふぁきあが腕を切られそうになると盛り上がり、その後一旦静まって、ふぁきあがヒーローの風(ヒーローはポーズをとると風を呼ぶことができるのです)に吹かれてカメラ目線の場面でクライマックスになります。次回予告で使われたときはかなりテンポが遅かった気がします。
バレエ音楽「コッペリア」/ドリーブ作曲
お話
ホフマンの『砂男』という小説が原作。原作は、コッペリウスという神出鬼没で不気味な老人(まるでドロみたい)の罠にかかり、若者が人形に恋した挙句、気が触れて自殺してしまうという内容。バレエでは喜劇に作り変えられています。
コッペリウスの作った人形コッペリアは出来が素晴らしいため誰も人形だと気づかず、町の青年フランツも彼女に恋をしていた。フランツはコッペリアに求婚しにいくが、彼の魂を魔法でコッペリアに移そうと考えたコッペリウスの罠で眠らされてしまう。しかし、恋敵の家に忍び込んでいたフランツの恋人スワニルダがコッペリアになりすまし、踊りを披露してコッペリウスを喜ばせ、隙を見てフランツと逃げ出す。翌日、鐘の祭礼の日、フランツとスワニルダは結婚式を挙げる。
音楽
15.AKTのタイトル曲です。この他「マズルカ」は特に有名で、CMにも使われたりします。「前奏曲」前半からは現代映画音楽のような印象を受けます。
自動人形の音楽
コッペリウスの部屋に忍び込んだスワニルダたちが走り回るうちに、タンバリン人形が踊り始めます。グロッケンの伴奏でピッコロが細かく動く、かわいい音楽です。
普段はエデルの手回しオルガン用に編曲されて登場します。回す速さにあわせて曲の速さも変わるという細かい演出が光ります。23.AKTの鬱陶しいマリオネットたちがしゃべる場面ではオリジナルのまま使われました。曲のかわいさがかえって不気味です。
情景と人形のワルツ
コッペリウスが呪文を唱えると、人形になりすましたスワニルダが魔法が効いたかのように振舞います。低い弦のメロディーと木管のかわいい音が交互に繰り返され、音楽が弦とフルートのワルツに変わると軽く踊り始めます。
15.AKT、みゅうとに心臓を捧げようとぴけが踊りだす場面で流れました。また、23.AKTでドロッセルマイヤーに操られてチュチュが踊る場面でも流れました。
時の踊り
鐘の祭礼で踊りが始まります。バイオリンのワルツに合わせて、12人の女性が時計の文字盤を、2人の男性が針をかたどって踊ります。
金冠学園のからくり時計用にベルの曲に編曲されて登場します。踊る王子と王女の脇に白鳥と騎士が立つという、伏線この上ないからくり時計です。
バレエ音楽「眠りの森の美女」
/チャイコフスキー作曲
お話
ペローの童話。オーロラ姫の誕生祝に呼ばれなかったことを恨んだ悪い妖精カラボスは、オーロラ姫に呪いをかける。カラボスの呪い通りオーロラ姫は長い眠りについてしまうが、百年経った後、リラの精の助けを借りたデジレ王子によって目を覚ます。
音楽
第三幕はオーロラ姫とデジレ王子の結婚式で、ペローやオーノワ夫人の作品の登場人物が踊りを披露します。
序奏
<プロローグ>より。前半は力強い全合奏でカラボスの主題を演奏します。後半はフルートとイングリッシュホルンで始まったリラの精の優しい主題が弦楽器に引き継がれ、トランペットも加わって盛り上がります。善と悪の対立を表していて、どちらの主題もこの後の曲で繰り返し登場します。
<プロローグ>は6.AKTのタイトル曲になっています。パウラモニが子供のころを思い出しながら不安になっている場面でリラの精の主題が、あひるとふぁきあのパ・ド・ドゥの場面でカラボスの主題が流れます。つまり、6.AKTで重要なのはチュチュが心の欠片を追い詰める場面ではなく、このパ・ド・ドゥの場面だということになります。「善と悪の対立=あひるとふぁきあの対立」という解釈も、この時点ではありかも。
ワルツ
<第一幕>より。オーロラ姫の誕生日を祝う宴で、若者たちが花々を手にワルツを踊ります。豪華絢爛な曲で、有名です。
6.AKT、エレキ座が金冠町にやってきてチラシを配る場面で流れました。
パ・ダクシオン(「ローズ・アダージョ」)
<第一幕>より。求婚する4人の王子たちとオーロラ姫が踊り、バラの花束を受け取ります。ハープのカデンツァで始まり、低音の刻みの上で弦楽器が主題を演奏します。その後少し盛り上がって弦の主題、さらに盛り上がって金管の主題で終わります。
6.AKT、パウロがぱパウラモニの不安を取り除く場面から翌日の通し稽古の場面にかけて流れます。
終曲
<第一幕>より。つむで指を刺した姫は倒れてしまう。カラボスが正体を現してカラボスの主題が、リラの精が現れて王たちを慰めリラの精の主題が繰り返されます。
6.AKT、チュチュが心の欠片を追いかける場面で流れました。
「最遊記 RELOAD」でもリラの精の主題が使われていたような気がします。
パノラマ
<第二幕>より。百年後、リラの精の案内でデジレ王子は真珠貝の船に乗って城へ向かいます。ハープの伴奏で弦楽器がゆったりとした幻想的なメロディーを演奏します。
3.AKTのタイトル曲です。チュチュがえびねさんを説得する一連の場面で使われています。えびねさんが船に乗っているのは元のお話に合わせたから?
パ・ド・カラクテール(長靴をはいた猫と白い猫の踊り)
<第三幕>より。ペローの童話に登場する、長靴をはいた猫と白い猫が踊ります。オーボエの音色が猫の鳴き声のようです。
6.AKTでパウロの出現にショックを受ける場面、16.AKTで人生のパートナーについて熱く語るうちに取り残されてしまい熱い視線に気づかない場面など、猫先生出演時に流れました。
「エグモント」/ベートーベン作曲
お話
*史実* ラモラル・エグモント(1522〜1568)。オランダ貴族出身の軍人で政治家。オランダにおける新教の普及とスペインからの独立を計ってスペイン軍に対抗するが、捕らえられて処刑される。
*ゲーテの書いた悲劇* オランダ独立運動の指導者エグモントは、親友の忠告を聞かずスペイン人総督に直言したために、死刑の宣告を受ける。彼を救おうとした恋人クレールヒェンも、力及ばず自殺してしまう。死刑執行の日、クレールヒェンの幻影に祝福されたエグモントは力強い足取りで刑場へと向かう。
音楽
序曲
全楽器によるF音の後、重々しい弦楽器と優しい木管楽器による序奏が始まります。不安にさせるようなメロディーが盛り上がっていくと、弦楽器とティンパニによる悲壮で雄大な主部に入ります。その後、厳しい弦楽器と優しい木管楽器の掛け合いの副主題が演奏されると、これまでのメロディーが形を変えて登場します。最後は気分ががらりと変わって華々しいファンファーレで終わります。この部分は終幕に流れる「勝利の行進曲」と同じものです。
「チュチュ」では、18.AKTのタイトル曲となっています。ふぁきあが幽霊騎士と戦う一連の場面などで流れました。また、23.AKTの歯車が逆に回り始める場面で主部が、25.AKT最後の王子が大鴉と対峙する場面で終結部が使われました。