PRINCESS TUTU MUSIC 4   プリンセスチュチュ音楽4


アニメの中で流れている音楽のことを知れば「プリンセスチュチュ」がもっと面白くなること間違いなし!(「チュチュ」の内容に関してはネタバレありです)
前置き無しに加筆・修正する場合があります。

ジゼル
歌の翼に
亡き王女のためのパヴァーヌ
ロメオとジュリエット
イーゴリ公
カルメン
ニーベルングの指輪

バレエ音楽「ジゼル」/アダン作曲
お話
「結婚を目前に死んだ踊り好きの娘の魂はヴィリとなり、深夜の森に集まって踊りだし、通りがかった若者を捕らえては死ぬまで踊りぬかせる」というドイツの伝説を扱ったハイネの詩(『ドイツ物語』)に、ユーゴーの詩「幽霊」を結びつけたもの。
公爵のアルブレヒトは身分を隠してロイスと名乗り、村娘のジゼルと付き合っていた。しかし、ジゼルに横恋慕していた狩猟番のヒラリオンがロイスの正体を知り、ばらしてしまう。さらにアルブレヒトにはバチルダ姫という婚約者もいることを知ったジゼルは、剣で胸を突き自害する。
ヴィリとなったジゼルは、ヴィリの女王ミルタたちと共に森で踊り始めていた。ジゼルの墓にやってきたヒラリオンはヴィリに捕まって溺死してしまう。ヴィリたちは同じく訪れたアルブレヒトをも捕まえようとするが、ジゼルは必死に彼を守る。夜が明けヴィリたちが消えると、ジゼルはアルブレヒトにバチルダ姫を愛するよう願い、茂みに消えていく。


音楽
ジゼルの登場
<第一幕>より。ロイスとジゼルが愛を語り合う場面の音楽です。フルートの軽快なワルツから始まり、弦による愛の主題が演奏されます。再びワルツに戻った後は、ヒラリオンの登場で一気に曲調が変わります。
「ジゼル」は4.AKTのタイトル曲なので多く使われています。「ジゼルの登場」は、ワルツ部分が冒頭特別クラスの練習曲用にピアノアレンジされて使われました。

ジゼルの墓に近づくアルブレヒト
<第二幕>より。オーボエとファゴットの静かでもの悲しいメロディーで始まり、弦のやや明るいメロディーに変わって終わります。
「チュチュ」では4.AKTのあひるとるうがエデルさんに出会い、お話のお話を聞く場面で流れました。

ヒラリオンとヴィリ
<第二幕>より。ヒラリオンを見つけたヴィリたちが踊りながらヒラリオンを追い詰めていく場面の音楽です。弦やフルートがメインとなって、圧倒されそうなヴィリの踊りを表現しています。
「チュチュ」では、4.AKTるうがみゅうとを守るために乙女の亡霊と踊る場面で使われました。ジゼル役のバレリーナは第一幕で演技力を、第二幕でバレエの技術力を求められるため、バレリーナにとって一つの指標となっているそうです。さすがのるうちゃんにも難しかったようです。

ヴィリのフーガ
<第二幕>より。本来は上の「ヒラリオンとヴィリ」に続き、ヴィリがアルブレヒトを捕まえようとする場面で演奏される曲です。様々な音域の弦楽器が同じメロディーを追いかけっこしていきます。
「チュチュ」では、4.AKTのチュチュが乙女の亡霊を説得しようとする場面で使われました。


聴くヒント
「ジゼル」の音楽は、初演時からブルクミュラーの曲(「村娘のパ・ド・ドゥ」)が使われていたのを始めとして、演じられるたびに音楽の削除・追加(ミンクスなどの曲)が行われてきました。そのため、現在一般的に演じられているビュッセル版などには「ヴィリのフーガ」が入っていません。残念ながらDVD初回限定版についている「Princess Tutu Konzert」にも収録されていません。ただ未確認ながら、ボニング指揮のものが最も原典に近いらしいので、もしかしたら入っているのではないかと思います。なお、カラヤン指揮ウィーン・フィルの「ジゼル(全曲)」というCDは縮小され再編曲された譜面を使っているので、「チュチュ」に使われている曲はほとんど入っていません。


「六つの歌曲」より「歌の翼に」
/メンデルスゾーン作曲


ハイネの詩が使われています。
*詩の大意* 歌の翼に恋しき君を乗せ、ガンジス河の美しい花の野に運ぼう。静かな月は映えて、花園の蓮の花は、愛しい者が訪れるのを待っている。菫は微笑み、星を仰ぎ、バラは密かに耳に香りを寄せる。馴れたかしこい小鹿が走りより、耳をそばだてる彼方には、清い流れのせせらぎが聞こえる。そこに茂るヤシの樹のもとに降り立ち、君と二人、愛と安息を味わい、幸の夢を見よう。(参考文献:『最新名曲解説全集 声楽曲2』音楽之友社)


音楽
もともとはピアノ伴奏に合わせた声楽曲ですが、甘いメロディーが愛されて、ヴァイオリンやピアノなどの独奏用、小管弦楽用などに多く編曲されています。
「チュチュ」でも、ピアノ編曲されたものが4.AKTのみゅうとに心の欠片を戻す場面、16.AKTのふれいあが花に水をやっている場面で使われています。きっとふれいあさんも心はガンジス河まで飛んでっちゃってたんでしょう。DVD解説書にはなぜか「愛の夢 第3番」と説明されていますが、「歌の翼に」が正解です。でもたしかに似てます。

亡き王女のためのパヴァーヌ
/ラヴェル作曲

音楽
パヴァーヌは、イタリア起源の優雅な宮廷舞曲です。「亡き王女のための」という言葉に由来や意味はなく、フランス語でのタイトル《Pavane pour une infante défunte(パヴァーヌ プール ユナンフォント デフォント》が韻を踏むように決められたそうです。ラヴェル自身は後にこの曲を酷評していますが、本来のピアノ曲である曲を自ら小管弦楽曲に編曲したりもしています。
落ち着いた第1主題、なんとなく不安げな第2主題、第1主題、高音できれいな第3主題、第1主題、終結部の順で演奏されます。どの主題も静かで伴奏は淡々とした八分音符ですが、主題のつなぎ目に近づくと全体の音量が上がり、伴奏もメロディーに合わせて動きます。管弦楽のほうを聴くと、あ〜20世紀の音楽だなあと感じられます。
「チュチュ」では、21.AKTのみゅうととるうが模範で踊る場面に、ピアノ原曲が使われています。


バレエ音楽「ロメオとジュリエット」
/プロコフィエフ作曲

お話
だいたいの物語はシェイクスピアの原作と同じです(幻想序曲「ロメオとジュリエット」)。製作段階ではハッピーエンドになっていましたが、その理由が「生きているから踊れるのだ。死んだら踊れない」だそうです。それを言っちゃ・・・!
ちなみにロメオの年齢は(シェイクスピア版では)みゅうとやふぁきあより一つ年上の16歳、ジュリエットはあひると同じ13歳(2週間後に14歳)です。


音楽
前奏曲
木管と弦によるロマンチックなロメオとジュリエットの主題から始まり、ヴァイオリンによるかわいいジュリエットの主題、ロメオの主題が演奏されます。
「チュチュ」では、8.AKT、久しぶりに登校してきたみゅうとにあひるが大胆にも抱きつく場面で使われています。片思いってところが激しく違う、逆ロミオとジュリエットだからか?

騎士たちの踊り
(組曲では「モンタギューとキャピュレット」)

<第一幕>第四場より。キャピュレット家の舞踏会。重々しい金管の伴奏の上に弦楽器のメロディーで、騎士と貴婦人の威圧的な音楽です。ジュリエットとパリスが踊る場面ではきれいなフルートのメロディーに変わります。最近ではソフトバンクのCMで使われ、有名になりました。
「チュチュ」では、21.AKTのあおとあが自分の部屋にふぁきあを連れ込み、ドロッセルマイヤーについて熱く暑く語る場面で使われています。

バルコニーの情景
<第一幕>第五場より。舞踏会の後、ジュリエットのことを忘れられないロメオがキャピュレット家に忍び込む、有名な「ああロミオ、あなたはどうしてロミオなの?」の場面。ヴァイオリンによるロメオの主題、フルートによるジュリエットの主題から始まります。テンポが変わるとイングリッシュホルンによる愛の主題が始まり、コルネット(トランペット?)を加えながら盛り上がってゆき、再び静まりながら終わります。
「チュチュ」25.AKTでは「ロメオとジュリエット」がタイトル曲になっています。この曲も、冒頭、るうの幼いころの回想シーンで中盤あたりの音楽が使われました。DVD解説書曰く、この回のるうとみゅうとの状況はまさにロメオとジュリエットだそうです。

ロメオとジュリエット〜ロメオとジュリエットの別れ
<第三幕>第一場より。追放され町を出る前に、別れを告げるためジュリエットの部屋へ忍び込んだロメオが、翌朝ジュリエットと別れを惜しむ場面。弦楽器のトリルにのってフルートの静かなメロディーから始まります(「ロメオとジュリエット」)。クラリネットソロのあと、少しずつ盛り上がり一旦明るい音楽になりますが、そのあと、めまぐるしく動く弦楽器の上で金管楽器が鳴り響き、離れ難くしている二人の心情を表します(「ロメオとジュリエットの別れ」)。
バカップルのテーマその2。25.AKT後半、湖に沈んでしまったあひるをふぁきあが助けに行き、湖の底で(なぜか上手に)パ・ド・ドゥを踊る場面で流れました。「人間のあひるとの別れ」と言えなくもないです、が、ふぁきあは鳥のアヒルでもOKのようです。


歌劇「イーゴリ公」/ボロディン作曲

お話
1185年、キエフ公国(現ウクライナ、バルト三国周辺)のノヴゴロド・セヴェルスキー公イーゴリが南方の遊牧民族ポロヴェッツ人(クマン人)と戦った史実を謳いあげた「イーゴリ軍記」(12世紀末成立)と、僧院文書「イパテフスキー年代記」とから、スターソフが作った筋書きがもとになっています。

イーゴリ公は息子のウラディミールとともに遊牧民族のだったん人を討伐しにいくが、捕らえられてしまう。イーゴリ公を気に入っただったん人の首領コンチャックは、公を懐柔するため様々な踊りでもてなす。だったん人たちが勝利の酒宴に興じている間にイーゴリ公は脱走するが、首領の娘コンチャコヴナと恋に落ちていたウラディミールは、留まってコンチャックに結婚の許しを請い、コンチャコヴナと結ばれる。国に帰ったイーゴリ公は妻と再会し、英雄として人々に称えられる。

*「だったん人」とは?* 「だったん(韃靼)人」とは、8世紀にモンゴル高原東部に出現したモンゴル系民族「タタール」の中国名です。しかし、現在ロシア連邦タタールスタン共和国(ロシア西部)などに住んでいる「タタール人」は、トルコ系なので「韃靼人」とは違います。本来曲に使われている名前をそのまま訳せば「ボロヴェッツ人」ですが、ボロヴェッツは黒海北岸にいた民族だと言われています。どうやら、ロシア人が東方遊牧民族を総称して「タタール」と呼んでいたという説から、それを中国名の「韃靼」に訳したようですが、苦しい訳だと言わざるをえません。


音楽
未完成のままボロディンが亡くなってしまったので、ボロディンと同じロシア「五人組」の一人リムスキー=コルサコフが弟子のグラズノフと共同して、残されたスケッチやピアノ譜を編曲したり曲を補充したりして歌劇に仕上げました。
だったん人(ボロヴェッツ人)の踊り
コンチャックがイーゴリ公をもてなすために用意した様々な踊りです。ボロディンが生前に完成させていた曲の一つで、「イーゴリ公」の中でも最も有名です。
<序奏>弦とホルンの上で、フルートが憂愁漂うメロディーを演奏し、遊牧民の音楽らしさを出しています。
<女奴隷たちの踊り>女声合唱「風の翼に乗って故郷に飛んでゆけ」が悲哀をこめて歌われます。「トリビアの泉」でたまに流れます。
<荒々しい男たちの踊り>クラリネットの軽快(自虐的ともいう)なメロディーで始まり、次第に金管による序奏のメロディーを加えながら盛り上がっていきます。
<全員の踊り>ティンパニが際立つ、その名の通り強烈な合唱「汗をたたえる歌を歌え」とともに、華やかな踊りが始まります。
<子供たちの踊り>木管が主な軽やかなメロディーの、短い曲です。
<男たちの踊り>堂々とした男声合唱「たたえよ汗」をバックに踊ります。クラリネットが必死な曲。
最後はこれまでの音楽を交互に再現しながら進み、全員の踊りで盛り上がって終わります。
「プリンセスチュチュ」では、3.AKTのあひるとみゅうとがえびねさんのお店で食事をする場面で、「荒々しい男たちの踊り」の音楽が少しだけ使われています。
また、坂本真綾さんのCD『坂本真綾シングルコレクション+ニコパチ』や『tune the rainbow』に収録されている「THE GARDEN OF EVERITHING〜電気ロケットに君をつれて〜」という曲の中にも、編曲されて登場しているそうです。


歌劇「カルメン」/ビゼー作曲

お話
メリメの小説が原作。
純真なセビリヤの衛兵ドン・ホセは、煙草女工のジプシー、カルメンの誘惑に負け、彼女のために密輸入者にまで身を落としてしまう。しかし、カルメンの愛が闘牛士エスカミーリョに移ったことを知ったホセは、エスカミ−リョが歓声をあびている闘牛場の入り口でカルメンを刺し殺してしまう。

なんだか現代によくありそうなお話ですが、メリメの原作はあまりにも殺伐としすぎていたため、オペラではホセの恋人として純情可憐なミカエラを登場させたりして、より一般向けの話に作り変えられています。


音楽
ハバネラ
<第一幕>より。ハバネラのリズムは、アフリカからキューバ(当時スペイン領)を経てスペインに入ってきた音楽です。CMなどでもよく使われる曲で、ただ一人カルメンに見向きもしないホセを、カルメンが誘惑しようと歌う曲です。ターンタタンタンというチェロの伴奏にのせて歌われますが、組曲版では歌の代わりに弦や管がメロディーを演奏します。突然音量が大きくなったりするこの曲が、カルメンの性格をよく表しているように思えます。
「チュチュ」では3.AKT、あひるとみゅうとがえびねさんに捉まってしまう、もといレストランに招き入れられる場面で使われました。また、17.AKTではふぇみおが自己陶酔するたびに流れました。

アラゴネーズ(間奏曲)
<第四幕への前奏曲>闘牛場を思わせるような激しい音楽から始まり、オーボエの哀愁を帯びたメロディーに移ります。合間合間にピッコロとクラリネットの軽快な旋律が挟まっています。アンダルシア地方の民謡ポロを取り入れているようです。
「プリンセスチュチュ」17.AKTのタイトル曲です。この曲も、ふぇみおが(牛と一緒に)登場するたび、冒頭の激しい部分が使われました。ふぇみおのテーマと呼んで差し支えないはず。


楽劇「ニーベルングの指輪」
/R.ワーグナー作曲

お話
中世ドイツの民衆叙事詩「ニーベルンゲンの歌」や、北欧神話と関係の深い歌謡集「エッダ」、「ヴェルズング物語」などをもとにしてワーグナーが創作した物語です。

序夜<ラインの黄金> ラインの乙女たちが守るラインの黄金から作った指輪を手に入れた者は、恋を諦めなければならないが、世界を支配する権力を得ることができる。それを知った小人アルベーリヒは黄金を盗み指輪を作るが、指輪は奪われ巨人の手に渡ってしまう。
第一日<ワルキューレ> 指輪を狙う主神ヴォータン(オーディン)は、正体を隠して人間との間に双子の兄妹ジークムントとジークリンデをもうける。生き別れとなった兄妹はやがて再会し恋に落ちるが、それがヴォータンの正妻フリッカの怒りをかい、ヴォータンからも狙われるようになる。ヴォータンの娘で9人の戦乙女(ワルキューレ)の一人ブリュンヒルデは、父の命に背いて二人を守ったために、火の山に封じられる。ジークムントは命を落とすが、彼の子(ジークフリート)を身籠ったジークリンデは生き延びる。
第三幕の前奏曲が、CMや映画「地獄の黙示録」などで有名な「ワルキューレの騎行」です。
第二日<ジークフリート> 生まれてすぐ母親を失ったジークフリートは、彼を使って指輪を手に入れようと企んだ、アルベーリヒの弟ミーメに育てられる。巨人を倒し指輪を手に入れたジークフリートは、指輪を奪おうとしたミーメを殺し、眠らされているブリュンヒルデをも助ける。
最後、ジークフリートとブリュンヒルデが愛を誓う場面で流れているメロディーは、「ジークフリート牧歌」にも登場しています。
第三日<神々のたそがれ> ジークフリートは指輪をブリュンヒルデに預け、一人旅に出る。しかし、彼の指輪と財産を狙うアルベーリヒの息子ハーゲンの薬によって、ブリュンヒルデを忘れてしまい、ハーゲンの妹グートゥルーネと愛し合うようになってしまう。彼の裏切りを知ったブリュンヒルデはハーゲンを使ってジークフリートを殺し、遺骸を焼く炎の中に自分も飛び込む。指輪はついにラインの乙女たちの手に戻るが、炎は天上へと昇りヴォータンの宮殿もろとも神々をを焼き尽くす。


音楽
ジークフリートの葬送行進曲
<神々のたそがれ」>より。月の光の中、ライン河の霧に包まれて英雄ジークフリートの遺骸が城へと運ばれていく場面で流れている音楽です。弦楽器の重く叩くような音と、低くうごめくようなメロディーから始まり、次第に勇ましくなっていきます。ワーグナーの葬儀ではこの曲が演奏されたそうです。
「チュチュ」では和田薫さんによって編曲され、「予兆」という曲として使われているようですが、曲の怪しげな雰囲気は同じです。卵の章ではクレールとともに使われることが多かったですが、雛の章に入ってからは特に黒みゅうとの怪しさを表現するのに大活躍しました。物語の中の王子ジークフリートもこうなっちゃおしまいだってことでしょうか(笑)。



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